みなさん、こんにちは。インベスティです。
それでは、まず手始めに国内屈指のメガチェーンストア、皆さんにとっても身近な家電量販店について、お話をしていきます。
そもそも家電量販店って何? 家電量販の歴史
家電製品のあけぼの
家電製品の歴史自体は、おおよそ100年ほどです。
20世紀初頭に電気掃除機、そして電気洗濯機、電気冷蔵庫、さらに20世紀最大の発明といわれるテレビなどが発売されました。
日本では昭和初期に、国内メーカーから家電製品の製造・販売が始まりました。
そして第二次世界大戦後の復興期に、国内製の家電製品が次々と開発され、急速に普及していきます。
国産冷蔵庫第一号といわれるSS-1200と国産洗濯機第一号のソーラーA型。
共に昭和5年(1930年)発売
出典:東芝ライフスタイルWEBサイト 『電気洗濯機、電気冷蔵庫75年の歩み』
この辺は、日本における自動車産業と似たような歴史を辿っており、産業史上では比較的後発に当たりますが、決して新興産業ではありません。
そして家電産業は自動車産業と同じく、わが国における基幹産業の一つとなっていきます。
個人商店が担った家電製品の普及
戦後の家電製品の普及を担っていたのは、個人が経営する『街のでんきやさん』、いわゆる最初の家電店です。
従来の専門店(八百屋さんや服屋さん)は、大戦で一度壊滅的な打撃を受けたとはいえ、元々全国各地で入手できるような仕組みを持っていました。
しかし、昭和初期に勃興してきた家電製品には、それがありません。
そのため、各メーカーが競って、家電製品を取り扱う個人商店の育成に注力しました。
家電メーカーの看板を掲げた街のでんきやさんが次々に生まれ、最盛期には何万軒と全国に広がって、メーカー販売網を構築していきました。
各地で勃興する家電量販店
しかし1980年代以降、個人商店では太刀打ちできない規模で、大量に仕入れて仕入値段を引き下げさせ、格安で販売する家電量販店が勃興します。
『100個仕入たら1個10,000円だけど、うちは10店舗で10,000個売るから、9,000円で仕入れさせてよ!!』
9,000円で仕入れて9800円で販売されたら、1個10,000円で仕入れている販売店は、ひとたまりもありません。ただし、メーカーとしても販売店間で競争意欲を煽ったり、沢山販売した所は優遇措置を取らなければなりません。
そんな形で、個人商店の中で他を圧倒し始めた大型家電店が徐々に現れ始めたのです。
ただし、元を正せば各家電量販店も最初は個人で行っていた『街のでんきやさん』から出発しています。その中で強力な販売力(営業力)とチェーンストア理論を武器に、拡大路線に進んでいき成功を収めたのが、現在皆さんが知っている家電量販店です。
ちなみに業界第一位の『ヤマダ電機』も、最初は創業者である山田昇(やまだのぼる)氏が、過去に自身が在籍していたメーカーの個人販売店としてスタートのが始まりでした。創業は1973年と、業界内では比較的に後発組に当たります。
歴史好きの方ならご理解頂けるかもしれませんが、地方領主が近隣の領土を飲み込んで戦国大名化していった『戦国時代』のような光景が、各地に広がっていたのです。
また、個人商店の頃は1商店で1メーカーという、現在の自動車ディーラーのような『系列店』といわれる販売手法が一般的でした。
それを、家電量販店が1つの店舗内に各メーカーを揃える『混売』方式に変えていったのです。
そういった歴史もあって、明確な区分がある訳ではないですが、街のでんきやさんである『家電店』とは別に、『家電』を『大量に販売する』家電量販店と呼ばれるようになりました。
その名残か、今でも家電メーカーの中では『量販店』と『地域店』や『販売店』などで区分けされ、同じ地区を担当していても、それぞれ担当者が別だったりします。
IT革命を後押しに一躍、流通業界の寵児となる
『まちのでんきやさん』が、徐々に『家電のスーパーマーケット』に変貌していく中で、1990年代から始まった、日本における『IT革命』によって、パソコンが飛ぶように売れる時代がやってきます。
以前と比べて安くなったとはいえ、当時のパソコンは20~30万円が当たり前。お客様の需要を満たすよう大量に仕入れる為には、莫大な資金を必要とします。また、従来の家電製品とは違う高度な専門知識を、パソコン販売では求められます。
しかし、大量販売で得た豊富な資金と販売ノウハウを持った家電量販店は、パソコンブームを追い風に日本各地で新規店舗を次々とオープンさせていくのです。
ちなみに現在は横ばい傾向にありますが、2017年には日本国内に家電量販店が約2,500店舗ほどあるそうです。単純計算で、都道府県毎に約50店舗が軒を連ねます。
カメラ系の台頭
個人商店から大規模流通店へと家電店が変貌して行く中で、本来は別の専門店であった『カメラ専門店』が家電製品を取り扱い始め、家電専門店と競合していきます。
今でこそデジタルカメラの普及で、家電店でカメラが販売されている事は当たり前でしたが、アナログカメラ時代はそれぞれ流通経路が違いました。
カメラも家電も、メーカーが製造ノウハウをそれぞれ蓄積しているため、おいそれと新規参入出来る業界ではありませんでした。
また販売に際して、どちらも専門的な知識を必要とするため、それぞれ流通経路が分かれていたのです。しかし、流通革命から始まる流通網の整備は、専門店の垣根を取り崩し、異業種参入を容易にしました。
現在では、小規模なカメラ専門店は八百屋、魚屋と同様、ほとんど見かけなくなりましたが、生き馬の目を抜く家電戦国時代で生き残っていったのが、現在の『ヨドバシカメラ』『ビックカメラ』など、いわゆる『カメラ系』と呼ばれる量販店です。
もちろん『カメラのキタムラ』などは専門店として生き残っています。
また、長崎のあるカメラ専門店が、同じく家電製品を取り扱いながらも店舗網の拡大ではなく、テレビショッピングに注力して成功を収めました。
それが現在、テレビショッピングの雄である『ジャパネットたかた』です。
地デジショックを機に業界再編の動き
留まる所を知らぬ勢いで成長を続けていた家電量販店ですが、成長の原動力であったパソコン販売の減少と共に、以前の勢いが失われていきます。
2000年以降、パソコンは徐々に出荷台数と販売単価を下げていき、
出典:MM総研
そこは、携帯電話やスマートフォンの台頭、液晶テレビの浸透、冷蔵庫や洗濯機の高級化、など、成長の軸を常に変えながら各社は成長を続けていました。
しかし、2008年に発生したリーマンショックと、2011年に起きた地デジショックの影響で、業界第一位のヤマダ電機でさえ赤字に転落するなど、業界全体で苦境に陥りました。
そのため、当時各地方に盤拠していた業界下位の家電量販店は、大手の量販店に買収されていくなどし、現在は大手6社程度に集約されています。
また、業界全体としても、業績が5兆円強で横ばいに推移しています。
家電量販店の紹介
家電量販店の歴史と沿革を紹介した所で、続いては現在日本に存在する家電量販店を紹介していきます。
業界第1位 ヤマダ電機
売上高:1兆5630億円 (2017年度)
店舗数:700店舗以上 (2019年1月)
※別ブランドの子会社は除く
業界ぶっちぎりの第一位。
第二位のビックカメラが売上高8000億円、と言うことを考えると、家電業界のガリバーといって差し支えありません。
グループ全体の連結売上高は2兆円以上と、小売、流通業の中でも特筆すべき存在です。
またM&Aによる吸収合併によって傘下に収めた会社を足すと、国内店舗数は950店舗にも及びます。
最大の特徴は、ポイント還元率です。
量販店によっては1~3%、場合によってはポイント無しのお店もある中で、軒並み10%以上のポイント還元が行われます。
また徹底的な低価格路線、こまめな競合店調査など競合対抗施策を打っており、価格神話を形成しています。
家電から始まり、おもちゃやゲーム、日用品まで店舗内で取り扱っているのも、特徴の一つです。
そして、従来は都市郊外に大型店を構えるロードサイド型『テックランド』が主力でしたが、カメラ系の台頭以降、都心部に超大型店を構える『LABI』の出店にも注力していました。
その他、パソコンメーカーやAV機器メーカーを傘下に収めて、自社ブランドとして販売したり、住宅、不動産関連会社を買収、創設するなどM&Aも積極的に行っています。
家電販売を中核として、貪欲に業態を拡大している、文字通り『進撃する巨人』です。
業界第2位 ビックカメラ
売上高:7906億円(2017年度)
店舗数:34店舗 (コジマは140店舗)
カメラ系である『ビックカメラ』が、ロードサイド型の『コジマ』を傘下に収めて、業界第二位に躍進しました。
ただし、かつて『コジマ』はヤマダ電機と熾烈な競争を重ね、一時期は売上高業界第一位についた事もありますので、昔日の感はあります。
東京都を中心とした人口密集地帯の一等地に、頂戴規模面積の店舗を構え、徹底的な価格戦略と積極的なメディア展開により、現在の地位を築きました。
ロードサイド店と違い売り場面積が広いため、近所の家電量販店に欲しい製品がなくても『あそこに行けば置いてあるかも』と思わせて集客する手法を健在です。
また、BIG(ビッグ)カメラと思われていますが、実はBIC(ビック)カメラです。
業界第3位 エディオン
売上高:6862億円
店舗数:1186店舗
東海地方の雄と言われた『エイデン』と広島を中心に展開する『デオデオ』が合併して、店舗数国内最多となる一大家電チェーンストアが2002年に誕生しました。
ちなみに、北陸の大手『100万ボルト』も傘下入りしていますので、店舗展開は西日本地域と北海道という特殊なエリア展開をしています。
エディオンの特徴といえば、やはり『常連客に対する手厚いサービス』となっています。売り場に対する人員配置数や、購入後のサポートに関しても評価が高いです。
また、ポイント還元率は1%と、申し訳程度の展開ですが、東海、中国では『地元に昔からあるお店』として厚い支持を受けています。
そして、もう一つの特徴が『エディオンカード』です。
一家に一枚エディオンカードを保持すれば、購入後の長期保障が無償で受けられる、という他には無い優れもののクレジットカードを提供しています。
当然の事ながら、年会費は必要です。
業界第4位 ヨドバシカメラ
売上高 6805億円 (2017年度)
店舗数 23店舗 (2019年1月)
ビックカメラと同じ『カメラ系』出身で、『都心型駅前立地』といわれる路線で現在の地位を築きました。名前の『ヨドバシ』は、かつて店舗が『新宿区淀橋』にあったためです。
ビックカメラと同じ路線、と書きましたが
・家電量販店初のポイントサービスを実施した『ゴールドポイント』
・ネットショップ形態に注力し、開設当時は珍しかった『当日配送』などを実施
・他の量販店とは一線を画し、同業他社との合併、企業買収に積極的ではない
など、似たような業態ながら、より独自色を強めています。
とりわけ、アマゾンなどWEB通販の台頭によって、一時期、各量販店が
『店舗で見て、安いネットで購入する』
という、『リアル店舗のショーウィンドウ化』が問題となった時も、自社WEBである『ヨドバシドットコム』を伸長させて成長を続け、一躍脚光を浴びました。
業界上位の中でも店舗数は極端に少ないですが、一店舗当たりの売上高が非常に高いことでも有名です。
業界第5位 ケーズデンキ
売上高:6791億円 (2017年度)
店舗数:492店舗 (2019年1月)
ELP(エブリディ・ロー・プライス)戦略と、積極的なFC締結による拡大によって、ロードサイド店として拡大を続けています。
あまり知られていないですが、創業者が加藤馨氏のため、創業当時は『カトーデンキ』でした。
ただし、2000年代からCMキャラクターを務めている、元『ドリフターズ』の加藤茶と関係があるのかどうかは、不明。
初期からこだわっているのは、『その場でズバッと現金値引き』。
他社がポイント還元制度を次々と導入していくのを尻目に、本体価格からの値引きする方針に、かたくななまでにこだわり続けています。
なので、途中で導入した会員カードもポイント還元制ではなく、レジで本体割引をする制度です。
また、拡大時期に地域に数店舗で存在する、地域量販店ともいうべき小規模量販店とFC契約を結び、自社の流通網を強化してきました。
地域名とケーズ、という『北陸ケーズ』『関西ケーズ』という名称は、FCの一部が、その後合併をした時の名残です。
以上、国内家電量販店の上位5社をご紹介しました。
最後に
とても身近な存在だけど、沿革はあまり知られていない、家電量販店を取り上げてきましたが、如何だったでしょうか?
今後も、みなさんの身近なお店の成り立ちや、製品そのものを紹介していければ、と思っていますので、よろしくお願します。
それでは、最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。